埼玉・千葉の通り魔　ホラー映画に性的興奮、満足感得ようと殺害計画へ

　さいたま地裁で始まった埼玉・千葉の連続通り魔事件をめぐる少年（１８）の裁判員裁判。１９日の初公判では検察側の冒頭陳述で事件の経緯が説明され、犯行前後の少年の特異な言動の一端が明らかになった。公判では少年を刑事処分とするか、矯正教育などを伴う保護処分とするかが争点になると同時に、事件に至った背景がどの程度解明できるかにも注目が集まる。（中村昌史、佐藤祐介）

　黒いカーディガンにベージュのズボン。事件当時１６歳だった少年は首もとまで髪が伸びた長髪で法廷に現れ、終始うつむき加減に机を見つめていた。

　ネコの殺害に始まり、鬱憤晴らしの放火から連続通り魔へ。冒頭陳述で検察側は少年が行為をエスカレートさせた経緯を説明した。

　また、中学生の頃からホラー映画で女性が苦しむ場面などに性的興奮を覚え、高校入学後、小中学生の女子を殺害すれば興奮や満足感を得られると考えたとも指摘。精神鑑定で、少年が広汎性発達障害と診断されたことも明らかにした。

　《小中学生の女子を乱暴し、首を切断して…》

　検察側が明かした少年の「計画」とされる内容だ。少年が犯行に使った血の付いた包丁をなめたとみられること、自宅パソコンから残虐な動画が閲覧できるサイトにアクセスした形跡があること、放火の様子を友人に撮影させるなど、検察の主張する事件前後の行動には特異さが際立つ。

　法廷で検察側は刺傷事件の被害者の複雑な心境も明かした。「自分が死ななかったから、松戸の子が襲われたのではないか」。三郷市で顔を切られ重傷を負った中学生の女子生徒は事件後、トラウマにさいなまれた。刺されたあごの傷は深さ約１０センチで頸（けい）動脈まで達した。後遺症で右目が思うように開かず、頭痛に悩まされている。

　「悲鳴をあげると口もとをゆがめ、ニヤッとわらったように見えた」。生徒は事件当時の少年の様子をこう説明し、「できるだけ反省してもらい、二度と同じようなことを起こさないでほしい」と呼びかけた。

　一方、松戸市で刺された小学生の女子児童は、たまたま普段と違う道を友人らと帰る途中に襲われた。必死に逃げたが脇腹や背中など計６カ所を刺され、かろうじて一命を取り留めた。

　弁護側は、少年が中学生のころから父親に頼んでナイフを収集していたことや、殺害行為で興奮が得られると思い込んでいたと指摘し、医療少年院での矯正教育が必要だと主張した。