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体育館移転、「川勝流」知事の意向で方針急転
2010 / 05 / 02 ( Sun )
 草薙総合運動場体育館(静岡市駿河区)の建て替え問題で県は、川勝知事の意向に沿って、隣接する静岡学園跡地へ建設する方針を固めた。

 これに対し、石川嘉延・前知事時代から、東静岡地区への移転を求めて交渉してきた静岡市にとって、県の方針決定は「寝耳に水」で、強く反発している。根回しもなく、自らの思いを口にする「川勝流」に、地元、草薙地区の住民も「話が違う」と困惑する。

 県は4月22日、現在の草薙総合運動場体育館を取り壊し、同運動場の一部となる静岡学園跡地に新たな体育館として建て替える、との方針案を発表した。新体育館と、既存の運動施設を一体的に利用できるといった利点を挙げ、「(静岡市の求める)アリーナ建設より総合体育館の方が優先順位が高い」という川勝知事の意向に従った。

 これに対し、静岡市の小嶋善吉市長は翌23日の記者会見で「結果ありきで甚だ残念」と露骨に不満を述べた。市は前知事時代から建設場所をJR東静岡駅北口の市有地に移し、体育館より大規模なアリーナに拡充するよう求めていた。

 市長の不満は東静岡への誘致が暗礁に乗り上げたからだけではない。一度は東静岡への移転に前向きな姿勢を示していた県が、事前説明もないままそれを「反故(ほご)」にしてしまったからだ。

 県幹部が「市に期待を持たせたのは確か」と認めるように、県は2008年に示した草薙総合運動場の「再整備基本構想」で、体育館について「県中部への移転も含めて、引き続き検討する」と明記した。静岡学園と用地買収で合意した後も、地元住民に対し「跡地は緑地にする」と説明していた。

 さらに、市条例が市有地を新庁舎建設地に想定していた点を県が指摘すると、市は条例を改正して懸念払拭(ふっしょく)に努めた。やり取りを重ねる中で、市や地元経済界は東静岡移転への期待を膨らませ、市は建設費約100億円で国際大会などを誘致できる観客8000人以上の施設の建設を考えた。

 風向きが変わったのは、09年3月、静岡空港の立ち木問題の責任を取る形で石川前知事が辞任を表明してからだ。県幹部は「事務方だけで話を勝手に進められない」として、体育館問題の交渉は一時中断した。

 7月に「ハコモノ見直し」を掲げた川勝知事が就任すると協議は進まないばかりか、今年1月、知事は従来の経過を覆し、静学跡地への建て替えを表明した。「突然の転換」(県幹部)には県体育協会の意向が強く働いた。

 昨年11月、知事が体育館を視察した際、県体協幹部は「アリーナは不要。静学跡地に新体育館を作り、静学の体育館はサブで活用すればいい」と提案していた。同行した県幹部が跡地を緑地にする計画があると伝えたが、知事は「サブとして使えるか検討したい」と、県体協に賛同した。

 県体協は「体育館は他の施設と一体的に草薙にあるべき。アリーナでは高い料金設定やイベント開催などで市民利用が妨げられる」と体育館の代替施設としての建設に反対している。県幹部も「エコパ(袋井市)があるのに、そもそも必要なのか」と冷ややかだ。

 渋滞悪化を懸念する地元町内会は、静学跡地での建て替えに反対した。市は料金面での配慮など県体協への反論を知事に提案したが県は反応せず、小嶋市長は「知事や県の姿勢は一方的だ」と不信を募らせている。(高田育昌)

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