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「ママー」インターホンから叫び声…2児死亡
2010 / 07 / 31 ( Sat )
 「ママー、ママー」。閉じ込められたマンションの一室からインターホン越しに助けを求めた幼いきょうだいの叫びは届かなかった。

 大阪市西区で30日に発覚した2児の死体遺棄事件。泣き叫ぶ声や大量のゴミ。ネグレクト(育児放棄)を示すサインはあったが、行政は踏み込んだ対応をとらず、最悪の事態を招いた。母親の下村早苗容疑者(23)は府警の調べに、自宅に放置した2児について「1週間後には死んでいるかもしれない、と思った」と供述、反省の言葉はないという。だれか、助けることはできなかったのか。

 児童相談所「大阪市こども相談センター」に虐待を疑う通報が寄せられていたにもかかわらず、2児の命を救えなかった大阪市。森啓・こども青少年局長らは30日夕、緊急記者会見を開き、「(5月の)最後の通報以降、安否確認をしないまま今日に至ったことを非常に反省し、後悔している。『問題あり』としか言いようがない」と陳謝した。

 市によると、寄せられた3回の通報のうち、3月30日の最初の通報は「夜中にインターホンを使って『ママー、ママー』と長時間叫んでいる」というものだった。下村容疑者に置き去りにされた長女・桜子ちゃん(3)と長男・楓ちゃん(1)がインターホンを通じて室外に助けを求めていたとみられ、通報内容は明らかに「夜泣き」とは違っていた。

 最後の通報は5月18日午前5時半。「30分前から泣き声がしている」。この日まで4度にわたり、部屋を訪ねながら居住者と接触できないままだった児相にとって、すぐ駆けつければ居住者との接触や子供の安否確認ができる貴重な機会だった。しかし、職員が訪ねたのは10時間以上が経過した午後3時50分頃。すでに泣き声や物音はせず、接触はかなわなかった。

 直後に訪問しなかった理由を、市側は会見で「泣き声だけでは、緊急性が高いという判断にならなかった」と釈明した。通報も途絶えた5月中旬以降は、安否確認は事実上、放置された。

 住民登録がなく、特定できなかった居住者の調査も尽くされていなかった。

 児相がマンション管理会社に問い合わせたのは、4月5日の電話での一度きり。同社に「また貸しで、誰が住んでいるかわからない」と言われ調査を断念していた。「所有者をたずねなかったのか」との会見での質問に、市側は「こちらは情報提供をお願いする立場。所有者の情報まではプライバシーの問題もあり、強く言えない」と“限界”を強調。森局長は「今までのやり方を踏襲していてはいけない、という思いを新たにした」と苦悩をにじませた。

 警察にも通報はあった。5月18日早朝、「激しく泣き叫ぶ子どもの声が聞こえる」と110番があり、西署員が同日、2度にわたって聞き込みをしたという。

 しかし、通報者は泣き声が聞こえる場所を、なぜか下村容疑者の住むマンションではなく「南隣のマンション」と説明。このため対象は別の場所に絞られ、確認できなかったという。

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