＜ＮＨＫ＞浜田委員長続投へ　参院選後と会長人事見据えて？

　ＮＨＫの最高意思決定機関、経営委員会委員に浜田健一郎委員長（６５）＝ＡＮＡ総合研究所会長＝を再任する国会同意人事案が提示され、浜田氏が委員長を続投する見通しとなった。今回の人事案は参院選後の経営委員長と会長人事を見据えた布石との見方がある中、浜田氏は毎日新聞の取材に、「政府からは何の説明もない。どういう条件で委員長を続投するかも確認できない」と、困惑気味に語った。

　新委員長には一時、日本たばこ産業（ＪＴ）の本田勝彦顧問（７１）の名前が、政府・与党で取りざたされた。本田氏は２０００～０６年、ＪＴ初の生え抜き社長を務め、学生時代には安倍晋三首相の家庭教師の経験もある。

　しかし、今回の名簿に本田氏の名前はなかった。委員の任命には衆参両院の同意が必要で、政府は７月の参院選前に本田氏の人事案を提示しても、与党が過半数割れしている参院の同意は得られないと判断したとみられる。経営委員の一人は「参院選後に本田氏の人事案が出てくることも考えられる」と指摘する。

　会長の任免権を持つ経営委内には「来年の会長選びをにらんだシフトではないか」と、見る向きもある。来年１月にはＮＨＫの松本正之会長が任期満了を迎えるため、夏からは選出へ向けた動きが本格化する。

　３年の任期満了（６月１９日）を迎える委員５人のうち、再任候補は浜田氏と、２月に就任したばかりの室伏きみ子・お茶の水女子大教授だけ。残りの松本会長を支持する３人は再任されなかった。ある経営委員は「財界を中心に松本会長の続投を望まない声がある。会長交代には、経営委員の中で松本氏の続投を望む人は少ない方がいい」と語り、会長人事をにらんだ動きだったと見る。

　また、本田氏の起用案が国会提示前に一部で報道されたため浜田氏の再任になったとの見方も出ている。菅義偉官房長官は２１日の記者会見で、「そういうことはまったくない。臆測で（本田氏に）あたかも決まっているような報道をしたのではないか」と差し替えを否定したが、自民党国対幹部は「首相官邸の意向だ」と語った。

　ＮＨＫは昨年１０月に初めて受信料を値下げしており、経営の効率化や営業活動の強化が求められているなど、課題は山積している。経営委員会は、学者や経済人など１２人の外部有識者で構成され、経営方針や会長を決める権限を持つ。経営委員長は最終的に委員の互選で決める。【土屋渓、小松やしほ】