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収入ゼロ、出費月1千万円超…口蹄疫被害の農家
2010 / 06 / 20 ( Sun )
 宮崎県内で口蹄疫(こうていえき)の発生が確認されてから約2か月。防疫上、最大の懸案だった感染家畜の殺処分の見通しは立ってきたが、家畜を失った農家の再建という難題が浮上している。

 発生農場のうち、約1万5700頭の豚を殺処分した川南町の養豚場の現状を取材した。

 「何もかも失ってしまった」。6月上旬、約1か月ぶりに畜舎に足を踏み入れた責任者の蜷川政美さん(63)の目には涙が浮かんでいた。

 8ヘクタールの敷地に約20棟の畜舎を持つ県内有数の養豚場「ハマユウ尾鈴ポーク」。畜舎のドアを開けると、床に消毒用石灰が数センチの厚さで積もっていた。給餌用の機械や空調機器は止まったまま。20人の従業員を抱え、毎日100頭以上を出荷していたとは思えない静けさだった。

 蜷川さんは畜産に携わって約40年のベテラン。県内1例目の発生直後から、1時間おきの畜舎消毒を始めるなど、迅速に対応した。海外で、ウイルス増殖力が強い豚に感染し、被害が拡大したことを知っていたからだ。

 しかし、努力は報われず、5月3日に3頭に症状が出た。感染した豚以外は助けたいとも思ったが、「外に感染を広げるわけにはいかない」と思い直した。殺処分は2日後に始まった。

 新畜舎建設のため、4月末に500万円で買ったばかりの土地を埋却地にした。約1週間かけてすべての豚の処分が終わった時、言いようのない無力感に襲われた。

 処分後も問題は山積している。埋却地や畜舎付近では、においがひどく、大量のハエが発生した。石灰をかけてしまった機械は使えない可能性が高い。

 発生後、収入はない。家族を抱えた従業員を解雇するわけにもいかず、20人分の給料を払い続けている。未払いの餌代や設備投資費の返済と合わせると、毎月の出費は1000万円を超える。

 補償をもとに、再建には前向きだが、行政は感染の封じ込めに追われ、将来の話はあまり進まない。再び借金しなければならないのか。眠れない日々が続く。

 川南町のJA尾鈴の調査では、発生農家42戸のうち、約9割が「再建したい」と答えた。だが4割は「とても資金が足りない」「再開の見通しは立たない」としており、宮崎の畜産の再建には相当な時間が必要だ。(甲斐也智)

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