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<原発30キロ圏>「避難対策めど」ゼロ 21道府県調査
2012 / 04 / 23 ( Mon )
 東京電力福島第1原発事故を受け、国が事故時に避難などの措置をとる範囲に指定する方針の原発30キロ圏について、住民全員の避難手段と避難先確保のめどがついた地域は、現時点では一つもないことが、毎日新聞の調べで分かった。渋滞対策など課題が山積し、実現性を疑問視する自治体も目立つ。国は原発の再稼働を急ぐが、人口密度の高い日本では、前提となる十分な防災対策が困難な現実が浮き彫りになった。

 国は防災対策が必要な区域を現行の8~10キロ圏(防災対策重点地域、EPZ)から30キロ圏(緊急防護措置区域、UPZ)に広げる方針。今後発足する原子力規制庁が決め、シミュレーションも行う。

 05年の国勢調査を基に原発周辺の人口を調べた谷謙二・埼玉大准教授(人文地理学)によると、54基の商業用原発(今月19日付で廃止された福島第1原発4基を含む)の30キロ圏には全国で延べ約442万人が居住し、最も多い茨城県の日本原子力発電東海第2原発周辺は約93万人に上る。

 それぞれの30キロ圏に入っている計21道府県に取材した結果、避難手段の確保では、北海道電力泊原発のある北海道だけがバス1500台で住民7万5000人を搬送するめどが立っていると答えた。当該区域に人の住んでいない岐阜県を除く他の19府県は検討中か今後検討するとし、茨城県は「非常に難しい」との見解を示した。

 また、大半の県は自家用車による避難を想定。人口の多い地域や道路、橋など避難ルートが限られている地域では、大渋滞で立ち往生する可能性も指摘されている。

 一方、避難先を確保しているのは九州電力玄海原発の30キロ圏内の佐賀、長崎両県だけで、30キロ圏外にある学校や公民館を地域ごとに割り当てている。両県とも避難手段は自家用車が原則。渋滞対策や自家用車のない人たちをどう避難させるかは今後検討するという。

 更に、入院患者や介護が必要な高齢者の避難対策は事実上手つかずの状態だ。西端の一部が玄海原発の30キロ圏にかかっている福岡県のみが「入院患者は県内の災害拠点病院に受け入れ可能」と回答したが、移送手段は決まっていない。他の県からは「病床の空いている病院を探すのは難しい」(長崎県)、「県境を越えた対応が必要だが、自治体同士の調整には限界がある」(島根県)などの声が上がっている。【日下部聡、袴田貴行】

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