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<新宿アパート火災>3日たっても死亡の4人身元確認できず
2011 / 11 / 09 ( Wed )
 東京都新宿区大久保で6日朝、7人が死傷したアパート火災。風呂はなくトイレも共同の築約50年の木造2階建てアパートは、23人の住人のうち18人が生活保護を受けていた。「他に住める場所がない」と移り住んだ身寄りのないお年寄りが多く、死亡した4人の身元は3日たっても確認されていない。都会の一角で起きた火災は、苦しい生活を続けながら孤独な老後を過ごす人々の姿を浮かび上がらせた。【喜浦遊】

 火災直後、現場のアパート「ローズハウス林荘」近くの路上に、住民の男性(71)が座り込んでいた。携帯電話と財布だけを手に何とか逃げ出したという。「死ぬかと思った。また新宿で住む場所を探そうと思えば同じような古い木造アパートしかない」と不安を口にした。

 染め物工場を経営していた男性はオイルショック後、不渡りを出して工場を手放し、妻子とも離別した。川崎市や都内で1人暮らしをしながら、タクシー運転手や水道の設備作業員などをしてきたが、腰を痛めて仕事ができなくなり、新宿駅でホームレス生活を送るようになった。

 生活保護を申請したのは約7年前。家賃5万円のアパートは四畳半一間。保証人が不要で、家賃の支給上限(月額5万3700円)に収まることが魅力だった。区からは家賃の実費の他に生活費として月約7万円を受け取る。食費や携帯電話代などに使う一方で、自らの葬儀代として貯金も続けているという。

 住人には同じような境遇の人が多かったが、付き合いはほとんどなかった。「自分の生活に必死で、他人を気遣う余裕はない」。今は、区の施設に滞在しながら次の入居先を探している。

 NPO自立生活サポートセンター・もやいの小幡邦暁事務局長によると、生活保護を受ける高齢者が都心の古い木造アパートに集まる背景には、ホームレス生活をしていた地域で生活保護申請をすることが多いという事情もある。

 8日夜、新宿区を拠点に独居高齢者の訪問活動をする僧侶、中下大樹さん(36)は、火災現場に近いJR新大久保駅周辺を歩きながら「ここも同じようなアパート」と指さした。古い木造で家賃は4万~5万円。保証人は不要という。

 韓流ブームで知られる大久保通りから一歩路地に入れば、同様のアパートがあちこちに建つ。街灯も少なく、道路は消防車が入れないような狭さだ。付近の不動産業者に掲示された物件には、生活保護受給者の居住が可能なことを示す「福祉可」と書かれていた。

 中下さんは「同じようなアパートは、数が多すぎて実態が分からない。生活保護を受けていなくても、生活が苦しい孤独な高齢者も多いはずだ」と話した。

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