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尾を引く「釈放」 困難な中国人船長強制起訴、公判
2011 / 05 / 08 ( Sun )
 沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で、那覇検察審査会が中国人の●其雄(せんきゆう)船長(41)を「起訴相当」と議決したことを受け、那覇地検が再捜査を進めている。ただ船長が既に中国に帰国しているため再捜査は難航、地検が再び不起訴にし、改めて検審に戻される可能性が高い。「民意」による強制起訴は可能なのか。公判は実現するのか。突然の釈放から異例の経過をたどった事件は今も、関係者の頭を悩ませている。

 「尖閣事件は今さらどうすることもできない。『検察が釈放したのに…』と言われたら、そうですとしか言いようがない。つらいところだ」。ある検察幹部は苦しい胸の内を明かす。

 船長は昨年9月、公務執行妨害容疑で逮捕されたが、那覇地検が「日中関係を考慮する」などとして釈放。その後、同罪で告発され、地検が起訴猶予に。4月、那覇検審が「起訴相当」と議決した。

 議決を受けて地検は原則3カ月以内に再処分を出さなければならないが、船長が帰国してしまった状況下では「処分は変わらない」(検察幹部)との見方が圧倒的だ。

 日中両国間では犯罪捜査の協力や刑事手続きを定めた「日中刑事共助条約」を締約しており、共助要請も可能だが、条約には「自国の法令で犯罪を構成しないと認められる場合」は共助を拒否できるとも規定。中国側は「巡視船の方からぶつかってきた」と主張しており、日本側から共助要請があっても応じる可能性は極めて低い。

 地検が不起訴とした場合、検審の再審査で「起訴すべきだ」と判断されれば船長は指定弁護士に強制起訴されることになるが、ここでも「釈放」がネックとなってくる。

 まず、大使館など外交ルートを通じて起訴状を送達する必要があるが、これが届くかどうか。刑事訴訟法の規定で2カ月以内に起訴状が船長のもとに届かなければ効力が失われる。この場合、再び起訴し起訴状を作成できるが、中国側の協力を得られなければ同じで、公判が開かれない状況が続くことになる。

 元最高検検事の奥村丈二中央大法科大学院教授(刑事法)は「船長が出頭しそうになければ、実際の裁判権の及ばない状況で同じことを繰り返してもしようがない。途中で送達をやめることになるだろう」と指摘。

 検審に申し立てを行ったジャーナリストの山際澄夫氏は「検審は国民の声を反映する機関。政府は、中国に対し捜査に協力するよう要請し続けることが重要だ」と話している。

●=擔のつくり

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