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宗派問わず全て供養=唯一残った寺、遺骨預かる―岩手
2011 / 04 / 14 ( Thu )
 「落ち着くまで預かってもらえませんか」。津波で町の半分が浸水した岩手県大槌町で、唯一被災を免れた浄土宗の寺「大念寺」には、毎日のように骨箱を抱えた町民がやってくる。大半の遺族が津波で家を失い、避難所に身を寄せているため、遺骨の安置場所がないのが現状だ。「亡くなった人が安らかに眠れるように」。寺は宗派を問わず、全ての遺骨を預かり、供養している。
 町立大槌小学校の裏の高台にある大念寺には、津波が押し寄せる直前、200人近くが逃げ込んだ。「小学校の校庭で波が渦を巻き、あらゆるものをのみ込んだ」。寺から様子を見ていた住職の大萱生義明さん(79)は振り返る。
 津波が引くと今度は、近くのガソリンスタンドが爆発。寺の近くまで火が迫ってきたという。町にあった他の二つの寺は津波や火災で消失。「まさに地獄絵図のようだった。この寺が助かったのは奇跡」と、妻の美枝さん(78)は今でも震え上がる。
 「世話になっていた寺がなくなったので…」。町民が遺骨を持って寺を訪れるようになったのは、地震発生から数日後。義明さんらは全ての遺族を寺に招き入れ、一回一回お経をあげて弔った。多くの遺族は「必ず迎えに来るから」と語り掛け、遺骨に花や菓子を供えた。中には、頻繁に花を取り換えに来る人もいるという。
 遺骨は日に日に増え、寺の一室は骨箱で埋め尽くされた。美枝さんは「この寺はこれまで何度も津波を乗り越えたが、こんな大津波は初めて。無事だったことに感謝しながら、町を見守り続けたい」と涙ぐんだ。 

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