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探査機「あかつき」金星上空へ “兄弟星”の謎に迫る
2010 / 12 / 05 ( Sun )
 今年5月に鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられた金星探査機「あかつき」は7日、金星の周回軌道に投入される。成功すれば、地球以外の惑星を回る日本初の人工衛星となる。金星の大気と気象の謎解明に向けた計画は正念場を迎える。(小野晋史)

 「あかつき」は7日午前9時ごろ金星に最接近し、周回軌道に入るためメーンエンジンを逆噴射する。噴射は12分間の予定で、最低でも9分20秒は噴射しなければならない。失敗すると次の投入機会は数年後となるため、チャンスは事実上、この1回だけ。最も緊張する瞬間だ。

 このとき、地球とあかつきの距離は約6400万キロ。電波の往復に約7分かかり、データや命令をやりとりすると間に合わないため、逆噴射などの軌道投入作業は事前に送信したプログラムに基づき、あかつきが自律的に判断して行う。

 日本は平成10(1998)年に火星探査機「のぞみ」を打ち上げたが、15年に挑戦した周回軌道への投入は機器のトラブルなどで失敗している。日本の宇宙開発にとって、惑星周回軌道への投入は“8年越しの宿題”ともいえる。

 あかつきの主目的は金星の気象観測だ。地球のすぐ内側で太陽を周り、大きさが同程度の「明星」は地球の兄弟星と呼ばれるが、大気や地表の環境は著しく異なる。

 硫酸の厚い雲に覆われた金星は、地表の平均気圧が地球の約90倍。大気組成の約96%が二酸化炭素で、温室効果により地表の平均気温は約460度に達する。さらに、上空を秒速約100メートルの暴風「スーパーローテーション(超回転)」が吹き荒れる過酷な世界だ。

 あかつきは5台の観測カメラを使い、赤外線から紫外線までの異なる波長で雲の中や地表付近を“透視”。カメラごとに観測する高度が違い、連続撮影と組み合わせて大気の流れを立体的に把握し、兄弟星の素顔に迫る。

 あかつき計画をまとめる中村正人・宇宙航空研究開発機構(JAXA)教授は「惑星探査は総合力。私たちのチームは『今後こそは投入するぞ』と意気込んでいる。百パーセントの自信がある」と話す。

 あかつきと同時に打ち上げられた、日光の微弱な圧力で進む宇宙ヨット「イカロス」は予定の実証実験を成功させ、6月に帰還した探査機「はやぶさ」は小惑星「イトカワ」の微粒子を持ち帰るなど、最近、太陽系での研究成果が顕著だ。あかつきの本格稼働で、太陽系が舞台の「大航海時代」は新たな段階に入る。

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