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北九州市で「奇形カエル」発生 何を訴える?
2010 / 09 / 18 ( Sat )
【ECO最先「探」】

 福岡県北九州市で今年5〜6月にかけ、片足のない「奇形カエル」が大量に見つかった。環境ホルモンの影響や遺伝子異常の可能性も指摘されたが、発見場所の水質などに異常はなく、現在はトンボの幼虫であるヤゴに食べられた可能性を調査中だ。ただ、原因がヤゴによる捕食であっても、なぜ今年に限ってなのかは疑問で、カエルを取り巻く環境に何らかの「異変」があったのは間違いない。奇形カエルは私たちにどんなメッセージを発しているのだろうか。(天野健作、溝上健良)

 北九州市によると、5月8日、同市八幡東区の板櫃(いたびつ)川の川辺にある親水広場「水辺の楽校」で遊んでいた子供から、市立自然史・歴史博物館に「足のないカエルを捕まえた」との連絡があった。

 学芸員が付近で90匹を捕獲して調べたところ、45匹の後ろ足の片方が完全になかったり、部分的に欠けていたりした。カエルは沖縄以外の全国に生息するツチガエル。いずれも今春、オタマジャクシから変態したばかりだったという。

 市は板櫃川の水と底の泥を採取し、専門機関に分析を依頼。環境ホルモンなどの濃度を調査した結果、生体に悪影響を与えるほどの汚染物質は検出されなかった。

 このため市は「化学物質が犯人であるという可能性は低くなった」と、立ち入りを禁止していた親水広場の規制を解除した。しかし原因がはっきりしないため、8月に両生類や化学物質の専門家ら5人で構成する検討委員会を立ち上げ、原因究明を進めている。

 「世界では、足が欠けたカエルが多数報告されているが、限られた範囲内で、90匹のうち半分が奇形というのは珍しい」と、検討委員会で委員長を務める九州大の小野勇一名誉教授(動物生態学)はいう。

 原因として、化学物質の影響、天敵による捕食、放射能による変異、遺伝子異常などが挙げられる。現在のところ、発見場所付近の20センチ四方の水面から20匹以上のヤゴが採取されたことなどから捕食の可能性が高くなってきているという。オタマジャクシの段階で足を食べられたため、食いちぎられた跡が残っていなかったと考えられている。

 市はヤゴによる捕食で奇形カエルが発生するのかを確かめるため、再現実験を行う方針。結果が出るのは来年以降というが、捕食と特定されても、なぜヤゴが大量発生したのかというナゾは残る。

 奇形カエルは市のホームページ上で公表された。市民らからは2つの反応が寄せられているという。

 「水辺で子供を遊ばせていいのだろうか」といった環境に対する不安の声と、「これを機会に環境を見つめ直したらいい」と、環境教育の題材にカエルを利用しようという提言だ。

 市環境保全課の溝口浩課長は「環境教育にというのはよい視点で、原因分析をしっかりやった上で考えていきたい」と話している。

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