＜アスベスト＞東急車両製造、元社員３人の遺族と和解

　東急車両製造（現総合車両製作所、本社・横浜市）の鉄道車両工場で働いていた元社員３人が中皮腫などで死亡したのは、同社がアスベスト（石綿）対策を怠ったためだとして、３人の遺族７人が計約１億円の損害賠償を求めた訴訟は１２日、大阪地裁＝高瀬順久（よしひさ）裁判長＝で和解が成立した。会社が解決金を支払う内容とみられる。

　訴状によると、３人は１９６０年代から同社の大阪製作所（堺市、閉鎖）で塗装や配管工事に従事。うち２人は７～８年間、１人は約３０年間勤務し、全員が石綿肺や中皮腫を患って死亡した。

　訴訟で原告側は、車両の断熱材に使われていた石綿を取り外す作業などが工場内のすぐ近くで行われており、飛散した石綿粉じんを吸い込んだと主張。会社側は、３人は直接石綿を扱っていなかったと反論していた。

　和解成立後、原告側が記者会見し、元社員の５０代の次女は「アスベストのニュースがなくなることを強く願っている」と話した。石綿肺にかかった父は９５年に６１歳で死亡。その後、石綿による健康被害で労災認定されるケースが全国で相次ぎ、２００８年に厚生労働省が公表したリストに同社の名前を見つけた。石綿健康被害救済法による補償は認められたが、会社側との交渉は決裂し、提訴に踏み切った。父は生前、会社に抗議していたといい、「私たちが闘ってきたことを、やりたかったのだろう」と思いを語った。

　鉄道車両にはかつて断熱材などに石綿が大量に使用されており、１０年３月までに石綿による健康被害で労災認定された人は旧国鉄の労働者ら７００人以上に上る。【内田幸一】

　総合車両製作所総務部の話　コメントを差し控えたい。