「損取り戻す」詐欺集団、投資損失４千人の名簿

　岐阜県警が摘発した振り込め類似詐欺グループの東京都内の拠点から、過去に先物取引などで損をした投資家ら約４０００人分の名簿が見つかっていたことが分かった。

　捜査関係者によると、１か所でこれほどの量が見つかるのは異例といい、グループの１人は「東京の名簿屋から１人１０～１００円で買ったリストを使い、『損を取り戻す』と言ってだました」と供述。県警は、名簿の流出が詐欺を助長しているとみて、投資家に注意を呼びかけている。

　「あなたが払った鉱物採掘権の購入代金２６００万円を返済する。手数料としてアフガニスタン紙幣３００万円分を買う必要がある」。２０１１年１１月、過去に投資で損をした名古屋市の７０歳代の女性は、自宅に電話してきた男の話を信用し、現金を渡した。

　県警は昨年、女性から現金をだまし取ったとして、東京都北区の会社役員萩原仁永(みのり)被告（４８）（詐欺罪で公判中）ら３人を逮捕。３人は１０年１０月～昨年１月、１９都道府県で計約７０００万円を詐取したとされる。

　萩原被告らは未公開株で損をした人の名簿を使って詐欺を繰り返し、拠点の事務所から、倒産した証券会社や経営破綻した「安愚楽(あぐら)牧場」（栃木県那須塩原市）など数十種類の顧客名簿が見つかった。事件に使った名簿は処分してあり、県警は、次の標的を探していたとみている。捜査関係者は「被害者は過去に損をした人が多い。名簿が悪用された可能性が高く、実態把握が急務」とする一方、「使い道を知らない名簿屋の取り締まりは難しい」と話す。

　岐阜県の県民生活相談センターには「『損を取り戻す』という話があるが、信用して大丈夫か」との相談が多く寄せられており、同センターは「過去に被害に遭った人がだまされる『二重被害』が心配だが、過去の損を詐欺被害と認識していない人もいる」と警鐘を鳴らす。

　捜索などで見つかった名簿は警察庁が管理し、各都道府県警が記載された人に電話で注意を促している。県警では「犯人は、損を取り戻したいという意識につけこむ。うまい話には警戒を」と呼びかけている。