＜福岡市人事委＞担任の停職処分取り消す　男児いじめで

　福岡市西区の市立小男性教諭（当時４６歳）が、担任する同小４年男児（当時９歳）にいじめや体罰をしたとして市教委から受けた停職６カ月の懲戒処分について市人事委員会（仲家暢彦委員長）に不服を申し立てたところ、人事委が「裁量権の逸脱」として処分を取り消す判定をしていたことが分かった。男児らが市教委などを相手にした損害賠償請求訴訟では、体罰などを認定する判決が既に確定。人事委は判決を否定する判定をしたことになり、議論を呼びそうだ。

　判定は１７日付。人事委は、停職６カ月に相当するいじめや体罰などはなかったと判断したとみられる。

　関係者によると、市教委は、教諭が「アンパンマン」と称して男児のほおをつまむなどしたとして「いじめ」と認定。０３年８月に停職６カ月にした。同年１０月に男児とその両親が教諭と市を相手に損害賠償請求訴訟を提訴。教諭はその直後に人事委に不服を申し立てたが、市人事委は訴訟の判決確定まで審理を停止していた。

　訴訟は１審の福岡地裁が０６年７月、教諭の体罰と差別的発言を一部認めて市に２２０万円の支払いを命令。２審の福岡高裁も０８年１１月、教諭の体罰と不適切な言動の一部を認定し、市に３３０万円の支払いを命じる判決を出して、確定した。

　教諭の代理人を務める南谷洋至（ひろたか）弁護士は「教諭の言動がいじめか教育的指導かを正面から判断してくれた」と評価。市教委は「人事委の判定を厳粛に受け止める」とコメントした。

　一方、訴訟で男児側の弁護を務めた大谷辰雄弁護士は「裁判所が認定した事実があるのに、なぜこんな結論になるのか。全く理解できない信じがたい判定だ」と話している。【木下武】