＜日朝協議＞拉致、議題に提起…４年ぶり再開

　【北京・西田進一郎、米村耕一、平壌・大貫智子】日本と北朝鮮の両政府は２９日午後、中国・北京の日本大使館で０８年８月以来４年ぶりとなる政府間協議を行った。北朝鮮の金正恩（キム・ジョンウン）第１書記の体制下では初めて。協議内容は明らかになっていないが、外務省関係者は「お互いの考えをきちんと述べた」としており、拉致問題を取り上げるよう提起したとみられる。協議は２日間の日程で、３０日午前に北京の北朝鮮大使館で引き続き行われる見通し。

　今回は本協議の議題などを調整する「予備協議」の位置づけ。外務省関係者は初日の協議終了後、日本大使館内で記者団に「実務的かつ率直な意見交換、協議を行った。やりとりの中身は途中なので紹介できない」と述べ、「明日も協議を行う方向だ」と話した。

　協議には、日本外務省の小野啓一北東アジア課長、北朝鮮外務省の劉成日（ユ・ソンイル）課長（日本担当）が出席し、午後３時（日本時間同４時）ごろから約２時間４５分間行われた。

　協議は、日朝両赤十字が今月９、１０両日、終戦前後に北朝鮮で亡くなった日本人の遺骨収集などに両政府の関与を求めることで一致したことを受けて開かれた。本協議では遺骨問題に加え「日朝間の諸懸案」を議題にする見通しだ。日本側は「最も重要な問題を回避して協議が進むことはない」（外務省幹部）としており、拉致問題を議題にするよう要求した模様。膠着（こうちゃく）状態にある拉致問題を進展させる糸口を探りたい考えだ。

　日朝政府間協議について、北朝鮮北東部などからの引き揚げ者らでつくる「全国清津会」の正木貞雄事務局長（８３）は平壌市内のホテルで記者団に対し、「（遺骨収集などが）良い方に話が進んでほしい。せっかくの話し合いのチャンネルが途切れないように願っている」と協議の進展に期待感を示した。