＜車検情報漏えい＞長野県警ＯＢが関与　依頼者から金銭授受

　長野県警の警察官が車検証に記載された個人情報を漏えいしたとされる地方公務員法違反事件で、愛知県警に逮捕された調査会社関係者は長野県警ＯＢの探偵で、個人情報１件つき１万３０００円～１万５０００円を依頼者から受け取っていたことが捜査関係者への取材で分かった。愛知県警は警察官との間で、金銭の授受の有無などを調べる方針だ。

　愛知県警は２０日、長野県警巡査部長、石黒俊雄（６０）＝同県松本市梓川梓＝と同、倉品宏（５０）＝同県中野市中野＝の２容疑者を同法違反（守秘義務違反）の疑いで、２人に漏えいを依頼したとして、県警ＯＢで探偵業「エイシン・リサーチ」経営、平林大生（だいお）容疑者（６０）＝同県松川村＝を同法違反（唆し）の疑いで逮捕したと発表した。

　車検証の個人情報は０５年の個人情報保護法施行後、原則的に本人以外は取得できなくなったが、警察庁は犯罪捜査のため国土交通省から情報提供を受けており、石黒容疑者らはこうした点を悪用したとみられる。

　容疑は石黒、倉品両容疑者は今年２月から４月までの間、勤務する駐在所などに設置された端末から警察庁の警察情報システムに接続し、車計１０台の所有者の氏名や住所など車検証記載の情報を照会し、平林容疑者に漏らしたとしている。３容疑者とも容疑を認めているという。

　愛知県警によると、１０台の所有者は同県や兵庫県などいずれも長野県外の人。平林容疑者は名古屋市内の調査会社から調査依頼を受けていた。石黒容疑者は０９年４月から今年５月までに約４４００件、倉品容疑者は同期間に４２０件の照会履歴があるという。

　石黒容疑者は長野県警松本署の梓川警察官駐在所、倉品容疑者は同県警須坂署の小布施町交番に勤務。平林容疑者は９８年３月に依願退職し、０７年に長野県公安委員会に探偵業の届け出をしていた。【稲垣衆史】

　◇勤務先の端末で２４時間照会可能

　長野県警によると、車両情報を検索する端末への「アクセス権」は職務上、端末操作が必要な警察官に与えられ、ＩＤとパスワードを付与している。駐在所勤務の石黒容疑者と、交番勤務の倉品容疑者にはアクセス権が付与され、勤務先の端末で２４時間照会可能。警察庁のデータベースに登録されている全国の車両情報を得ることができ、照会した警察官や照会内容は記録される。

　不正防止のため、上司が定期的に照会状況を確認することになっているが、両容疑者について長野県警の飯浜誠警務部長は「調査中」と述べるにとどまった。

　同県警によると、石黒、倉品両容疑者と、県警ＯＢの平林容疑者の３人は平林容疑者が現役だった９４年３月～９８年３月、松本署で同時期に勤務。平林容疑者が経営する探偵会社は「警察ＯＢによる確実・格安・安全調査」とうたった広告をインターネット上や電話帳に掲載していた。【福富智】

　◇「極めて遺憾」長野県警が謝罪

　長野県警の飯浜誠警務部長は２０日夕、長野市の県警本部で記者会見し「警察官に与えられた照会業務の権限を悪用した国民の皆様への背信行為だ。法を順守し、情報を保護する立場の警察官としてあるまじき行為であり、極めて遺憾。国民の皆様に深くおわび申し上げます」と謝罪し、深々と頭を下げた。