東南アジア青年の船　内閣府、仕分けに反旗　「事業は国益」存続求め新組織

　府省庁版事業仕分けで下された「東南アジア青年の船」の廃止判定を受け、内閣府が事業存続に向け「効果検討会」を新設することが７日、分かった。府省庁側が仕分け判定に反旗を翻し、組織を設け効果を実証するのは極めて異例。東南アジア諸国連合（ＡＳＥＡＮ）の次世代リーダーの人脈開拓に有効な事業を廃止すれば、同様の事業を行っている中韓両国の独壇場となり、国益を損なうと危機感を募らせているためだ。（比護義則）

　効果検討会は９日にも発足し、外部有識者のほか国際交流を担当する内閣府の中川正春特命担当相もメンバーとして加わる見通し。

　「青年の船」は毎年１１月、日本から東南アジアに出発。日本とＡＳＥＡＮ各国の若者が船内で約１カ月半にわたり共同生活を送り、日本人学生らは皇室や日本文化を紹介する。

　各国参加者の抽選倍率は数十倍に上り、政財官の親族が多いのも特徴。参加者ＯＢとして、タイのノパドン・パタマ元外相や長浜博行官房副長官ら政府高官も数多く輩出している。

　内閣府は各国参加者のＯＢ会などを通じて経歴を更新し、政府や企業での役職を確認。この情報は各国の日本大使館に提供され、外務省では外交案件を進める上で武器となる人脈と位置づけてきた。

　「青年の船」とは別に、外務省ではＡＳＥＡＮと中韓両国の青少年も招く「２１世紀東アジア青少年大交流計画」を平成１９年度から実施してきた。だが、この事業は今年度で打ち切りが決まっており、外務省内でも「青年の船」の存続を求める声が強い。このため、内閣府は事業継続には費用対効果を高める必要があると判断し、外務省以外の省庁のニーズにも応じられるよう人脈情報のネットワーク化も進める意向だ。「青年の船」の予算は２４年度で６億３千万円だが、政府高官は「人脈はインフラ輸出拡大や安全保障面での関係強化に資する」と強調する。

　ＡＳＥＡＮ各国との青少年交流は中韓両国も重視。中国は「友好親善事業」としてＡＳＥＡＮ各国の青少年を数百人規模で招待している。参加者は中国の政治・経済の現状や共産党の役割を学び、中国側参加者との交流も深める。

　韓国の交流事業はより実践的だ。韓国とＡＳＥＡＮ各国の参加者が約１週間の討論を経て、政策課題について共同で提言案をまとめ一体感を醸成させる研修プログラムを組んでいる。

【用語解説】東南アジア青年の船

　昭和４０年代、東南アジア各国で日本製品不買運動が起きたのを受け、田中角栄政権が４９年に開始。ＡＳＥＡＮ各国から若者を招き、日本国内でのホームステイの後、船でＡＳＥＡＮ各国を回る。６月１１日の「省庁版事業仕分け」で、仕分け人は経費が高額と問題視し、内閣府の園田康博政務官も「大幅な見直しがない限り廃止すべきだ」との判断を示した。