＜輿石幹事長＞消費増税法案の再修正断念

　民主党の輿石東幹事長は小沢一郎元代表の離党を食い止めるため、自民、公明両党との３党合意に基づき衆院で修正した消費増税法案の参院での再修正を模索していた。党が分裂して参院の「第２党」に転落する危機感から、元代表説得の切り札とする考えだったとみられる。しかし、自公両党が反発し、両党との協力関係を重視する野田佳彦首相側が打ち消しに走ったことで、輿石氏も再修正の断念に追い込まれた。

　輿石氏は２８、２９日に元代表と３回会談したが、その内容は明らかにしていない。元代表に近い山岡賢次副代表は３０日、記者団に「輿石氏が法案を撤回したり、納得できる大幅修正をするよう努力してくれている」と語り、輿石氏も周囲に「大きな修正はしない」と修正そのものは否定しない姿勢をみせていた。

　民主党関係者は「輿石さんの最後の手段は参院の審議で一気に再修正し、首相官邸や自公を押し切ることだった」と語る。税率引き上げ時期の延期や、景気条項に盛り込んだ経済成長率を努力目標から増税条件に「格上げ」する案などが念頭にあったとみられる。

　自公側がこれを受け入れるはずもなく、首相側が再修正封じに動いた。２８日の輿石氏と元代表との会談後、首相自ら輿石氏に電話で「どうなんですか」と問い合わせ、首相と会談した前原誠司政調会長が明確に否定した。

　元代表は離党について７月２日に最終判断する意向だ。同調者は衆院では少数与党となる５４人以上に届かない見通しだが、参院はすでに少数与党。民主党会派１０４人から１９人以上が離党すれば、自民党会派の８６人を下回って第２党に転落する。元代表が「離党予備軍」を集めた２８日の会合には、参院から１４人が出席した。

　民主党の参院議員会長を６年間務める輿石氏にとって、権力基盤とも言えるのが参院民主党。公党間の約束を踏みにじる再修正まで模索したのは、参院の主導権を失う危機感からとみられる。【光田宗義】