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平田容疑者起訴、爆発事件で再逮捕へ 残る闇 オウムの影は?
2012 / 01 / 21 ( Sat )
 平成7年、東京・目黒公証役場事務長の仮谷清志さん=当時(68)=が拉致・監禁され、薬物を注射されて死亡した事件で、東京地検は20日、逮捕監禁罪でオウム真理教元幹部、平田信(まこと)容疑者(46)を起訴した。逮捕容疑の致死罪適用は見送った。

 地検は、平田被告が仮谷さんを教団施設まで拉致する計画は認識していたが、薬物が継続的に投与されることを認識していたとまではいえないと判断した。警視庁は今後、宗教学者の元自宅爆発事件の爆発物取締罰則違反容疑でも、平田被告を再逮捕する方針。

 起訴状によると、平田被告は元教祖の麻原彰晃死刑囚(56)=本名・松本智津夫=らと共謀。7年2月28日、東京都品川区で仮谷さんを拉致し、山梨県の旧上九一色村の教団施設に監禁したなどとしている。仮谷さんはその後、薬物投与で死亡したが、平田被告の行為は、拉致の見張りや、仮谷さんを乗せた車の後続車の運転などにとどまっていたとみられる。

 東京地裁は20日、平田被告をかくまったとして逮捕された元信者、斎藤明美容疑者(49)の勾留延長を認める決定をした。期間は30日までの10日間。

 ■聴取で蓮華座、多く語らず

 16年10カ月の逃亡生活に終止符を打ち、大みそかに出頭した平田信被告。逃亡生活の実態や出頭した動機について、弁護士には冗舌に話す半面、取調官にはあいまいな態度を貫いている。オウム真理教の呪縛が解けていないからなのか。逃亡の陰に教団側の支援があったからなのか。警視庁は引き続き「逃亡の闇」の解明を進める。

 ◆ウサギの死で出頭

 警察庁長官銃撃事件の時効成立、東日本大震災の発生…。平田被告は接見した滝本太郎弁護士に出頭を決めた理由について、これらの出来事を挙げた。

 滝本弁護士によると、出頭理由はもう一つあった。それは11年前から大阪府東大阪市の潜伏先で飼っていたウサギの死だ。

 平田被告は自宅マンションに籠もり、斎藤明美容疑者は偽名を使って働いていた。仙台ではアイドルの山口百恵さんと小泉今日子さんからとった「山口今日子」と名乗り、大阪へ移ってからは平田被告が仏教の女神「吉祥天(きっしょうてん)」から名付けた「吉川祥子(よしかわ・しょうこ)」を使った。

 「偽りの人生」で唯一心を開ける「家族のような存在」だったのがウサギだった。死んだのは昨年8月。2人はウサギの骨を見ながら目黒公証役場事務長の仮谷清志さんのことを話し合ったという。

 「仮谷さんは骨も拾ってもらえなかったんだね」

 唯一の「家族」の死で、逃亡生活を続ける必要はなくなったと考えたという。

 平田被告と斎藤容疑者は逃亡生活について弁護士には詳細に説明した。東京、福島、宮城、青森、仙台、大阪という逃亡ルートだ。しかし、取調官の質問には応じておらず、二面性を見せている。

 「他人に迷惑をかけたくない」として供述を拒んでいた平田被告。しかし、出頭・逮捕から1週間後に斎藤容疑者の存在を弁護士に明かした。2人でつつましく生活してきたという弁護士への説明が事実なら、他に迷惑をかける「他人」はいない。

 「はっきりしたことを言わないのは謎だ」。警視庁幹部は首をひねる。

 平田被告は教団との関係について「信仰は捨てた。麻原彰晃死刑囚の死刑執行は当然」と話し、麻原死刑囚の写真も5年前に切って捨てたという。しかし取り調べ中には時折、教団の修行やセミナーの際に行われた蓮華(れんげ)座を組む。

 警視庁幹部は「まだオウムの影響が残っているのかなと感じることがある。呪縛が解けているか、よく分からない」と語る。

 ◆蓄え紙幣入れ替え

 斎藤容疑者が自首の際持ってきた現金800万円は「逃走当初に教団側から受けとった資金の残りと稼いだ金」と説明したが、具体的な内訳については明言しないという。

 紙幣は最近発行されたもので、2人は紙幣を入れ替えていた形跡がある。警視庁は指紋から他の逃亡支援者の存在が発覚するのを避ける行為だった疑いがあるとみている。2人は何を隠そうとしているのか。捜査はなお続く。

 ■「犯意」立証、捜査焦点に

 平田信被告は東京・目黒公証役場事務長監禁致死事件、宗教学者の元自宅爆発事件のいずれについても関与は認めているが、一貫して犯意を否認している。逮捕監禁も爆発物取締罰則違反罪も故意でなければ、犯罪として成立しないため、容疑を否認していることになる。捜査の焦点は平田被告の「犯意」の立証に移っている。

 捜査関係者によると、平田被告は監禁致死事件について「信者の救出と聞いた。仮谷清志さんが車に連れ込まれるのを見て、初めて拉致と分かった」。爆発事件では「爆発物と知らず指示通りに運んだだけ」と供述。いずれも犯罪の実行には関与しているが、具体的な行為の意味は知らなかったという主張だ。

 しかし、判決が確定している「共犯者」の供述は、平田被告の主張と真っ向から対立する。監禁致死事件で現場を指揮した教団元幹部、井上嘉浩死刑囚(42)らは警視庁の再聴取に「(平田被告は)事前謀議にも参加し、目的を知っていた」という趣旨の供述をしている。

 この矛盾を“解消”するため、警視庁は今後、麻原彰晃死刑囚らからも事情聴取する方針だ。

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