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仮設建設に十津川木材 地産ぬくもり被災者に
2011 / 09 / 13 ( Tue )
 奈良県十津川村は13日、台風12号の豪雨による土砂崩れなどで自宅を失ったり、土砂災害の危険にさらされたりしている村民の仮設住宅について、地元産のスギやヒノキを使って建設する方針を固めた。かつて林業が盛んだった村は、森林面積約6万5千ヘクタールの半分が人工林。全国で林業が衰退するなか、更谷慈禧(よしき)村長は「こんな時に十津川の木を使わんでどうする」と仮設住宅の“産直”を決断した。

 同村は豪雨被害で11棟が全壊。さらに、土砂崩れの兆候を示す亀裂が多数見つかり、長期間にわたって避難指示解除のめどが立たない集落もあり、仮設住宅が必要と判断した。

 一方で、村は林業再生プロジェクトを展開中で、一大拠点となる「木材加工流通施設」を村内に建設中で、11月に完成予定だった。ところが、豪雨で同施設に通じる橋が崩落。工事車両が入れない状態となり、同プロジェクトは事実上、頓挫している。

 村はこれまで、原木の出荷にとどまっていた林業を一転し、木材の乾燥や製材も始めていた。奈良や大阪の工務店とも連携し、伐採から住宅完成までの「産直住宅」を建築する「十津川郷士(さと)の家ネットワーク」を数年前に立ち上げ、年間30~40棟の住宅を建てるまでになった。

 昨年11月には、村長や村の林業担当職員らが断熱性能が極めて高い木造・省エネ住宅の先進国のドイツを視察。ドイツに習って十津川産材で、断熱性能が高い窓サッシの第1号が8月に完成し、さっそく関東の省エネ住宅に導入された。

 順風だったこうした取り組みも、今回の台風で吹き飛んだかに見えた。だが、「林業不振で山に手が入らず、地力が弱まったことが今回の土砂災害を招いた」などと更谷村長が指摘するように、村の木材の需要を高めることで山が手入れされ、防災面にも貢献できると考え、「林業再生で山をもう一度元気にするしかない」との機運が高まってきた。

 地元産材で建てられることになる仮設住宅に、村の復興と地元の林業再生へのシンボルとして、期待が集まり始めている。

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