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<太平洋戦争>朝鮮半島出身動員26万人 配属先の全容判明
2011 / 09 / 03 ( Sat )
 太平洋戦争中に朝鮮半島から動員された軍人・軍属約26万人の全配属部隊と配置先が、近代史研究家の竹内康人さん(54)=浜松市=の調査で明らかになった。日本政府が韓国政府に引き渡した軍人・軍属関係の名簿を調査した。朝鮮半島出身の軍人・軍属は人数や配属地など詳細が不明だったが、アジア・太平洋全域に配備された全体像が初めて判明した。多くの犠牲者を出したニューギニア戦線で朝鮮半島出身者が配属された全部隊名と人数など、初めて明らかになった事実も多い。【扇沢秀明】

 竹内さんが調査した名簿は、旧陸軍「留守名簿」(16万148人)▽「工員名簿」(2102人)▽「軍属船員名簿」(7046人)と、旧海軍「軍人軍属名簿」(10万778人)。旧陸海軍省や戦後に改組された第1、第2復員局が作成した。軍人や軍属の履歴、配属先、死亡状況などが記載されている。

 名簿は日本国内では本人や遺族などにしか公開されず、93年に日本政府が韓国政府に引き渡し、韓国国家記録院で整理された。09年から日本人研究者の閲覧が可能になり、竹内さんが10年に3回渡韓し調査、集計した。

 配属先は日本占領地全域にわたる。陸軍は、朝鮮半島約6万2000人▽中国(旧満州、台湾含む)約4万3000人▽日本約2万人▽南方戦線約1万4000人▽航空軍・船舶軍(日本・アジア各地)で約2万人。より細かい地域別では旧満州1万5548人、フィリピン3926人、ビルマ4061人など。

 海軍は、鎮海(朝鮮半島南部の軍港)軍人約2万1000人▽横須賀・呉・佐世保・舞鶴・大湊などの軍属約8万人など。陸海軍で計約26万人になる。

 例えば、京城(現ソウル)の竜山で編成された歩兵第20師団はニューギニアに派遣された。留守名簿によると、第20師団の歩兵第78、79、80連隊に1140人の朝鮮半島出身者が配属されている。竹内さんは「この部隊は、日本への忠誠を示そうと志願した兵士が多い。それを激戦地に派遣し、歩兵部隊だけで1000人以上が戦死した」と、説明する。

 朝鮮半島出身軍人・軍属は敗戦後、第2復員局が「約36万人」と集計。その後、旧厚生省が「約24万人」とした。しかし、原簿が研究者に非公開なため詳細は不明だった。竹内さんは「未払い給与の記載もあり、日韓国交回復時の日韓条約で解決済みとされた個人補償問題にも影響するだろう」と話す。

 調査結果は、論文「朝鮮人軍人軍属名簿からみた朝鮮人動員の状況」として、強制動員真相究明全国研究集会の冊子「日本の朝鮮植民地支配と強制連行」に収録。冊子の問い合わせは神戸学生青年センター(078・851・2760)へ。

 ◇朝鮮半島出身軍人・軍属

 太平洋戦争末期の1944年、日本の植民地だった朝鮮半島でも徴兵制と国民徴用令が施行され、「軍人・軍属」が動員された。戦闘や施設建設、輸送などに従事した。BC級戦犯として処刑された人もいる。

 ◇大変貴重な資料

 朝鮮半島出身の軍人・軍属に詳しい早稲田大学大学院の内海愛子講師(日本アジア関係史)の話 朝鮮半島出身者の配属先は部分的には判明していたが、体系的に明らかにされたのは日韓を通じて初めて。基本的な資料として大変貴重だ。

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